生活習慣など


選択と習慣

“ひとつ言えることは、簡単に「絶対これが正しい」というような人の言葉は、そのまま信用できない、ということだろうね。”

「健康によい」とはどういうことか ナラエビ医学講座 斎藤清二著

  1. 包括的な変化
  2. 慢性的な筋緊張
  3. ストレス
  4. 生活習慣病



4.生活習慣病


体表の鍼治療はその人の状況や状態に応じて多様な変化を生じさせます。
身体の働きに一時的な影響を及ぼすだけでなく、鍼を続けていくことで習慣的な選択も変化していきます。
そのため長年の習慣と結びつきが強い問題の改善や予防にも役立ちます。

厚労省では生活習慣病を「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」と定義しています。
そういった生活習慣に加えて、感じ方や考え方、人とのかかわり方(関係性)など精神的な習慣も関連すると当院では考えています。

習慣が変化していかなければ、たとえ薬を飲み続けても根本的な改善は望めません。
しかし無理に習慣を変化させようとすると強いストレスになることは多いです。
鍼治療を続けていくとそういった習慣が自然と変化していくことがあります。

たとえば食事や嗜好品が変化していくことはよくあります。
食事が少しでいい人は少しに、もう少し食べた方がいい人は多めに、そして好みなども変化してその人の現状に合ったものになっていきます。
たとえば糖尿病の方に鍼治療を続けていくと、肉は食べられるのに自然とご飯の量が減っていくことがあります。
それは外からの知識でそうするようになったのではなく、ご飯を多く食べると食後に気分が悪くなるので少なめに抑えるようになったとのことでした。
鍼治療を受けることでそれまで気づかなかった身体の声を感じ取れるようになり、自分自身にとって適切な食べ物を、そして適切な量を、自然と選択するようになります。

また根本の緊張が減っていくと、一時的なストレス解消のため(気持ちを切り替えるため、落ち着くため)に

などの必要性(依存性)が低減していきます。

体表の鍼を受け始めてから毎日何杯も飲んでいたコーヒーが飲めなくなった(少なくなった)という人もいました。
元々あまり身体に合っていなかったのにコーヒーを飲み続けていた場合、鍼を受けていくことで自然と飲まなくなっていきます。
また、天日塩をとても美味しく感じたりするようになることもあります(マグネシウム不足等)。

運動も食事と似ています。
その人にとって無理のない、必要な運動を自発的に行うようになります。
他者からのアドバイスによる運動は、はじめる前によく吟味しなければいけません。
たとえば姿勢が悪い(猫背)ということで、背筋を伸ばすことや運動(筋力トレーニング)をアドバイスされる場合があります。
しかし、元々無理な力が入っているから(慢性的な筋緊張があるから)猫背なのであって、それを正そうと更に他の場所に力を入れたところで悪化するだけです。
また無理に運動して膝や腰などを痛めるケースも多いです。
それよりも「不必要な力が入っている」と気づいていくことが大切で、気づけば自然とバランスは取れていきます。
そして外的な(他者からの)評価を気にし過ぎて無理に活動することも減っていきます。
体表の鍼治療はそういった自然な変化を促します。

長年服用している薬なども習慣の一つに入ると思います。
薬には多かれ少なかれ副作用があり、多種多量の薬を服用し続ければそのリスクは上がります。
特に積み重なった緊張(ストレス)から生じている症状に対して一時的に抑える薬を常用している場合は問題が余計拗れていきます。
検査の数値(基準値)から「生活習慣病」の薬を飲み続けても、根深い緊張が残ったままでは根本的な改善は望めません。

体表の鍼治療は緊張を解いていきますが、それに伴い身体の自然な働き(治癒反応)が活性化し、それまでより薬が効きやすくなってくる(薬の必要性が低下してくる)ことがあります。
それによって継続的に飲んでいた薬やその量が合わなくなってきたり(きつく感じたり)、それまで出なかった副作用が出てきたりします。
そのような場合、市販薬であれば薬を飲まなくなっていきますし、処方薬であれば主治医に相談することになります。
ほとんどの医師は検査数値や症状が改善、もしくは安定していれば、
「ちょっと薬がきついようです」
などと伝えれば減らすと思います。
減薬・断薬をされるのであれば信頼できる医師と相談しながら、身体の変化を感じながら、少しずつ着実に進めることをお勧めしています。
逆に、中にはどうしても必要な薬もあるかと思います。
鍼治療はそういった薬の副作用などにも効果を発揮し、吐き気や胸のムカツキ、腹痛といった不快症状を和らげます。
また、放射線治療による副作用(悪心・吐き気など)に対して一般的な薬と刺す鍼・刺さない鍼を比較した海外の研究もありますが、鍼治療はどちらも薬より効果が出ているようです。(※1)

病院での治療方法について一旦自分で落ち着いて考えたい時などにも体表の鍼治療はお勧めです。
たとえば病院で検査結果が出て、考える間もなく(少しパニック状態のまま)、次から次へとやるべきことが告げられ予定が入れられていくことはよくあります。
向こうのペースで全て決められてしまう感覚や心から納得できないまま何となく従ってしまう感覚は後悔の種になりやすいです。
不安や勢いに流されず冷静に考えるのはなかなか難しいことです。
そのような時に鍼を受けると、落ち着いて主体的に考えるきっかけになります。
また鍼治療を続けると、それまで通っていた医者や病院を変えることは多いです。
セカンドオピニオンの考え方は広まってきていますが、医師という専門家の中でも意見が異なることは割とあり、薬や治療法などに対する考え方も様々です。
鍼を受けていくことで「治療方法や担当医師が自分自身に合っているか」を重視するようになり、本当に信頼できる医師を探すようになったり、医師との関係性がより無理のない方向へ変化したりします。


■情報の統合

世の中「あれをしろ、これをするな」などといった情報が氾濫し、教える人はたくさんいます。
しかし誰にでも、いつでもどこでもどういった状態でも当てはまる正解はありません。
たとえ知り合いに当てはまっても自分自身に当てはまるかどうかは分かりません。

大多数の意見やその時代の支配的な意見が必ずしも正しいわけではないことは、薬害や公害等の歴史を振り返れば明白です。
効果があったというデータ(論文)があっても、それで本当に自分自身に効果があると言えるのか分からないことも多いです。
またお金の流れや社会の仕組みを予備知識としてある程度知っていないと、情報に溺れて流されてしまうこともよくあります。

当院でも「何を食べたらいいか?」「運動はどうしたらいいか?」などと聞かれることもあります。
しかし、
「その時その場で身体の状態を感じて、それに沿って適切に」
が基本となります。
頭で考えて”決める”より、身体の要求に”気づく”方が無理がありません。
体表の鍼治療は自分自身を観察し、身体の声に気づくサポートとなります。

それは何か”絶対的な正解”を教えて貰いたいと考えている人にとって、頼りない物足りないと感じるかも知れません。
子供の頃から常に外部から指示や正解を与えられ、それに従ってきた場合は大人になっても何か権威による強い意見に対して盲目的に従いたくなります。
身体の調子が悪かったり、病気で不安になっていたら尚更です。
しかし、そういった場合こそ慌てず、 「自分自身にとってどうか?」という観点で判断することが大切です。
(このHPに書いてあることも、ご自身でよく吟味してください)

情報を自分自身で検討していくことは、はじめは時間がかかりますし大変だと思います。
選択や判断をするのに不安が生じて戸惑ったり、孤独感が出てきたりすることもあります。
しかし少しずつ進めていくことで次第に早くなっていきますし、注意深くなり、応用が利くようになります。

大切なことは落ち着いて観察することであり、身体のシグナルに耳を傾けていくことです。
それは「西洋医学か東洋医学か」などといった問題よりも根本的な部分です。
選択(のパターン)も習慣であり、体表への鍼を通じて自分自身に焦点を当てていくこと(自分自身を感じ取ること)に伴い、判断の基準が変化し、選択がより自然で無理のないものになっていきます。
それに伴って病気や身体に対する考え方なども変化していきます。


(※1)「Acupuncture compared with placebo acupuncture in radiotherapy―induced nausea―a randomized controlled study」  Anna Enblom

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