治療方針


当院の鍼治療の方針について

“自分の身体的体験を熟知すると、事象の解釈がどの程度「感じ」方によって形成されるかをいっそう学ぶことができるようになる。”

サイモン・H・フィッシャー著 「からだの意識」より

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  1. 治療方針
  2. 鍼治療の頻度や回数について




治療方針


当院では症状(問題)を改善していくため、体表のツボから緊張を解消していきます。
強い刺激で症状を一時的に飛ばすわけではなく、問題が出てくる土壌を少しずつ改善していく地道なアプローチです。


<どのように?>
強い緊張状態は心身に様々な影響を及ぼします。
しかし緊張状態が継続することで、変化しないものは次第に認識できなくなります。
身体感覚の知覚が部分的に閉ざされて、バランス(疲れや偏り)を回復する働きが滞ります。

また、自身の緊張を何となく感じてはいるものの、

○どこが緊張しているのか判らない
○いつ(どのような状況・場面で)緊張しているのか判らない
○なぜ(何に対して)緊張しているのか判らない
○どうやって緊張を解消するのか判らない

などの場合もあります。


慢性的な緊張は記憶から習慣となっている状態です。
そして習慣となった緊張状態は自己イメージと結びつき、それを維持・存続・拡大させようとする強い力がはたらきます。
(記憶を基にしている自己イメージは”イメージ”であり対象ですが、そのように認識できない部分が不要な緊張と結びついています)

そのため緊張を変化させようとすると、強い抵抗(不安)が生じます。
基本的には緊張や不安が大きいほど変化への抵抗も大きいですし、年齢が上がるにつれて抵抗は大きくなります。

そのような習慣的な緊張状態を解消する端緒となるのが体表です。
体表は身体内部と外界との境界であり、緊張や分離の感覚と密接に関連しています。

その中でも体表のツボはある種の盲点となっており、習慣的な緊張を解く要点です。
変化への抵抗(緊張)が強く大きいほど、体表のツボへの明確に認識できない刺激が重要になります。


体表のツボに鍼をすると、緊張(不注意)で閉ざされていたツボは反応して全体へと変化が波及していきます。
ツボは注意深く見守られること(集中)で緊張が解け、適応のための新たなチャレンジ(学習)をはじめます。

鍼を受けた人は(よほど敏感でない限り)ほとんど刺激を感じないため変化に気づくまでに間(ま)が生じます。
そして変化に気づいた時に、それまでとの差異を感じます。
(多くの場合、本人が最初に気づくのは筋緊張の変化です)

それは識別であり、情報の更新です。
緊張で閉ざされていた(意識できなかった)心身の現状を再認識します。

溜まっていた疲れ、抑え込んでいたストレス(感情)、治りきっていなかった古傷などが表層へ出てきて、状態や状況に応じて処理され回復していきます。
そしてそれ以前よりスッキリします。
現状を認識することが治癒や回復へ向かう第一歩となります


弱い緊張の習慣ならそれで解消されますが、多くの場合、生じた変化はそれまでの習慣によって次第に元の状態へと戻されていきます。
(習慣の根強さと、その方の識別力や集中力などとの関係によります。)

それでもよい状態の感覚(普段の状態との差異の記憶)は完全には失われず、その差分を埋めていくプロセスが始まります。
身体(皮膚)を通じて学んだことは頭では忘れても、記憶され積み重なっていきます。
体表の鍼治療を続けていくことで、少しずつその刺激と効果(変化)を学習していくことになります。

体表へ鍼を受けた微細な感覚はイメージでも再現できるようになっていきます。
体表を意識する能力が向上することで、次第に意識しなくても自らの注意(気づき)として再現するようになります。
鍼を受けたときと似たような変化が生じるようになり、自然なものになっていきます。

その過程でそれまで無自覚に行っていた習慣・癖(※1)・パターン・傾向を明確に認識していくことになります。
「もう緊張している必要がない」という理解が深まることで、記憶とつながっていた緊張の習慣が弱まっていきます。

それはより無理のない状態の学習であり、緊張の習慣からの脱学習です。
緊張が解けた状態を繰り返し身体に覚えさせることで、緊張の習慣を捨てていきます。
緊張の習慣は心身の反応(防衛)システムの一部ですから、それを改善・再構築していくとも言えます。

東洋医学的には「気の滞りを解消していく」と言えます。
東洋医学では様々なはたらきを総合的に「気」としています。
水が高い所から低い所へ流れ、電気が電位の高い所から低い所へ流れるように、気も流れています。
川に障害物があれば水の流れが妨げられるように、皮(皮膚)(※2)に緊張や疲れがあれば気の流れは妨げられます。
障害を除去すること、緊張や疲れを解くことで流れはよくなり、抑えられていた心身の機能(治癒力)が高まります。

はじめは意識できなくなっている心身状態に少しずつ気づくことからスタートして、よい状態がより長く、広く、深くなっていくことを目指します。
全体の調子が底上げされ、施術を受ける必要性(体表のツボへ注意を導いてもらう必要性)が低下し、自立していきます。



(※1)「癖」はやまいだれに”辟”であり、”辟”には「中心からそれる」等の意味
(※2)「疲」はやまいだれに「皮」

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鍼治療の頻度や回数について


当院の鍼治療は強い刺激で一時的に感覚を麻痺させるわけではありません。
慢性的な緊張を解いて、全体のバランスを回復(改善)していくためのアプローチです。

続けていくことで次第に変化が現れて、それが少しずつ定着していきます。
そのプロセスは何かの練習や学習と同じであり、自転車に乗れるようになっていく過程と似ています。



そのため、「トレーニングの5大原則」が当てはまると思います。

1.漸進性の原則・・・少しずつ効果を積み上げていくこと
2.全面性の原則・・・特定の部分だけでなく全体をみていくこと
3.意識性の原則・・・本人が目的を意識して主体的に取り組むこと
4.個別性の原則・・・個人の目的や現状に合ったアプローチをすること
5.反復・継続性の原則・・・一定期間に渡って定期的・継続的に取り組むこと


針治療の回数や頻度は個人の状態(現在の症状や回復のスピード)や状況によって異なります。
当然のことながら問題が慢性的で深刻であれば、長期的・継続的な取り組みが必要になります。
当院では基本的は週に1回のペースで続けていくのがよいと感じています。

症状が激しい場合は最初の数回は間隔をつめて、変化や方向性をしっかり確認するとよいと思います。
それで方向性が合っていると感じたら、その後は定期的に続け、よい状態が安定して続くようになれば、少しずつ間隔をあけていくのが効果的だと感じています。
(特にはじめのうちは、間隔をあけ過ぎて悪くなってから来るというのはお勧めしません)

基本的に若い方のほうが変化は早いことは多いですが、高齢者でも続けていけば変化は生じます。
高齢者の場合は特に週に1回コツコツと続けていくのがよいと感じています。


続ける間に途中浮き沈みがあります。
特に慢性的な問題の場合は回復過程において抵抗を感じることや、問題(改善)が行ったり来たりすることが多いです。

最も気になっていた問題が気にならなくなることで他の問題が気になりはじめたり、それまで意識できなかったより深い問題を認識することもあります。
よくなってきた問題が何かの出来事をきっかけに大きく後退することもありますし、それまでできていたことが一旦できなくなることもあります。

溜まっていた疲れが表に出てくることもありますし、それまで感じられなかったことを感じ取れるようになっていくことで他者との関係において一時的に傷つきやすくなったりすることもあります。
そういった変化、変動を無理に抑えることなく自力で乗り越えていく中で、長い目で見ると全体として少しずつよくなっていきます。

継続して治療が受けられなくても身体が微細な刺激で心地よい方向へ変化した体験はどこかに残ります。
たとえ一回だけでも、既にその方に変化の準備ができていた場合は大きなきっかけとなることもあります。
方向性を知ること、可能性に気づくことは、その後ご自身で改善していく力となるでしょう。


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