施術後の反応


施術後の反応と排泄作用

“生き残るためには、生命体は環境に対して敏感でなければならない。
この感受性は生命体を取り囲む膜に基づいており、この膜は食物や養分を摂取し、老廃物を排出するという風に選択的透過性を持っている。
選択性、あるいは異なる刺激を弁別する能力は認識や意識の基礎である。
つまり、正確に言うならば、意識とは体表の現象であると言ってよいと思う。”

アレクサンダー・ローエン著 「からだのスピリチュアリティ」より

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施術後の反応


体表への鍼刺激はほとんど感じないほど微細です。
当院では鍼を刺さないため、刺した後の痛みや出血(内出血)などはありません。
お灸もしないので、お灸の痕が残ることもありません。

しかし「好転反応」などと呼ばれる反応が一時的に生じることがあります。(出ないこともあります)
それは経験上、鍼で皮膚を突き破る(侵害する)、強く押す・揉む、皮膚を焼く、電気を流す、などの強い刺激を多く受けた後の反応とは異なります。
強い刺激を受けるとそれ自体で疲れてしまうことがあり、特に敏感な体質の方はそういった反応(もみ返しなど)が起きやすいです。


体表のツボに鍼をすることで緊張(不注意)状態が解けると、それまで偏ったまま習慣化(麻痺、固着、凍結)していた心身のバランス(疲れ)が回復していきます。
それに伴なって心身に様々な反応が生じてきます。

反応は人によって、そして状態(状況)によって様々ですが、 

などがあります。

大切な仕事やイベントの後など張り詰めた状態から解放された時に、「それまでの疲れがどっと出てきた」といった経験は多くの方がしていることかと思います。
また、それまで意識できていなかったことにふと気づいたり、信じ込んでいたことが事実ではなかったと知った時に一時的に混乱した経験もあるかと思います。
鍼で緊張状態が解けると、部分的(一時的)にそれらと似たようなことが起きることがあります。

多くの場合、緩やかに反応が生じます。
全体が疲れ過ぎている場合や、目の疲れ、考え過ぎ、噛み締めなどで顎関節や頭蓋骨がガチガチに固まっている場合などは強く(激しく)出てくることがあります。
(その方の置かれている状況によっても出方が異なります。しっかり休むことができる時には強めに出て回復が大きく進むこともあり、そういったことを無意識に判断しているように感じます。)

基本的に偏りや緊張が強く大きければそれを解消するエネルギーもまた大きくなりますが、長くても数日もすれば一連の反応は自然におさまっていきます。
そして全体が調整されて、それ以前よりスッキリして身体を軽く感じたり、落ち着いたり、元気になったりします。

施術後にそういった反応が出たら(出なくてもですが)TVやPC・スマホ、コーヒーやお酒などはできるだけやめて、エネルギーを回復に当てて下さい。
また、ゆっくり経過を観察して下さい。
特に子供はほとんど反応が出ないか、とても早く過ぎます。

反応に対して慌てて何かをする必要はありません。
たとえば、固まって動きにくくなっている部分が動き始めるときに熱感や痛みを感じることもありますし、疲れ過ぎていると軽く熱が出ることもあります。
気だるく眠くなったり、逆に妙に頭が冴えて眠りにくくなったりすることもあります。
しかし、そういった反応を抑える薬(シップ、痛み止め、風邪薬、睡眠薬など)やカフェインは必要ありません。

むしろ何かすればする程(抵抗するほど)、こじれて長引くことが多いです。
あまりに頑強に抵抗して反応を押さえ込むことを続けると、緊張状態からの回復を止めることになります。
自然(治癒力)に任せて休息した方が後の経過がよいです。
そして反応を観察して理解が深まることで、経過がスムーズになっていきます。



  

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排泄作用について


体表の鍼治療を受けると、便、鼻水、汗、 咳などの排出・排泄機能が一時的に高まることがあります。
それまでの緊張状態が解けて、心身の働きが切り替わることなどで自然と生じます。

続けていくことで体質(習慣)が変化して、慢性的な便秘が解消されていくことも多いです。
興味深いところでは、長年にわたって溜め込んだ不要なモノ(本や衣類など)を片付け始める人も多いですし、人間関係も整理されていきます。

特に、ここで行っているのは皮膚への鍼です。
皮膚は現代医学において排泄器官のひとつとされています。
東洋医学では皮膚は肺と関連しており、肺は大腸と表裏の関係です。

“肺の合は皮なり” 素問:五臓生成篇 
“肺は大腸に合す” 霊枢:本輸篇
皮膚-肺-大腸は排出・排泄系統と言えます。
そして正経と呼ばれる12本の経絡は肺経がはじまりです。

鍼で体表(皮膚)のツボへはたらきかけることで、そういった不要な物事を外へ出す機能(排出・排泄・意識化)が最初に高まっていきます。
呼吸も「呼=吐いて・吸=吸う」で、まず出します。
不要な物事を出すことで、自然に必要な物事が入ってくるのが基本です。

こういった作用は”discharge:ディスチャージ”という言葉がしっくりくると思われます。
辞書によると、『放電、あるいは荷降ろし、解放、放出、排出、義務の遂行などを意味する』とあります。
皮膚上のツボに鍼が触れると何か皮膚表面に変化(ひょっとしたら電気的に)-discharge-が生じて、老廃物や有害物質の排出作用-discharge-が高まったり、筋肉の慢性的な緊張というそれまで背負ってた重荷を降ろしたり-discharge-、抑え込んでいた情動から解放-discharge-されたりする、といったところでしょうか。





■適応

傷んだ物を食べた場合や、異なる環境へ旅に出た場合の単純な下痢などは、無理に薬で止めるよりも、出してしまった方がはやく回復します。
花粉や黄砂(特に有害物質が付着している場合)などが体内に入らないように鼻水やセキで排泄して防御しようとする反応も治癒力の一部です。

また、合わない食べ物や薬等を摂取したときに生じる蕁麻疹(ジンマシン)なども排泄作用の一つです。
風邪による発熱もウイルスなどを攻撃し、排出するための免疫(治癒)作用の一部です。

ここではそういった排出・排泄作用を無理に抑えることはしていません。
そういった排泄反応を無理に止めれば出すべきモノが体内に蓄積していきます。

体表に鍼をすることで全体のバランスが整っていくと、不要な物は自然と排泄されます。
興味深いことに、鍼治療をはじめると家の中の不要なものを片付けはじめる(整理する)ことも多いです。


排出・排泄作用は物質に対してだけでなく、心にとっての有害刺激(モラルハラスメントなど)でも同じです。
鍼を受けていくことで抑圧していた感情(記憶)や不要な思い込みなどを消化し、排出・排泄していきます。
そして感情の揺れ動きや様々な気づきなどの過程を経て、関係性が以前より無理のないものに変化(治癒)していきます

その過程で抑圧していたストレスなどが表層に出てくることもあります。
それらは認識されることで消化(排出・排泄)されていきます。

もし子供の頃に怒りを出すことを許されない(できない)環境で育つと、抑圧が癖になっています。
そういった癖は心身に様々な問題を引き起こします。
鍼で緊張が解けるとそういった抑圧が弱まり、未処理のままだった問題の処理(消化・排泄)がはじまります。
それまで抑えていた怒りを認識することもありますし、それまで怒ることだと思っていなかったことに対して怒りを感じはじめることもあります。
そして次第に客観視され、処理されて、おさまっていきます。

ここでは無理に感情を意識させるようなことや、何かを思い出させるようなことなどはしていません。
(心理カウンセリングや分析などは行っていません)
本人の準備ができたとき(治癒が進む時)、自然とそうなっていきます。


処理の途中、強い思い込みの下に生きてきた人がその思い込みが外れることで、それまでの自信(自己イメージ)を保てなくなります。
思い込みに基づいて他者へ自動的な反応や断定的な物言いをしていたのができなくなったりします。
そういった思い込みが少なくなったり弱まったりすることで、本当の自信が回復してきます。


排出・排泄しても適応できる能力以上の有害物質や有害刺激が周囲にある場合は移動などの選択が必要になります。
適応の能力は人によって様々です。
たとえ他者が「この程度なら大丈夫、問題ない」と言ったとしても、それが全ての人に当てはまるわけではありません。
「自分自身はどうなのか」が大切です。

それゆえ鍼をすることで排泄機能や処理能力が高まるとしても、「だから大丈夫です」などと言うことはできません。
適応できない有害物質や有害刺激は食べ物や限定された人間関係であれば、ある程度選択することで回避できます。
しかし周囲全てが汚染されていれば、自分自身が移動して環境を変えていくことが必要になります。

環境や関係性を変えて新たな適応をしていくことは大きなストレスを伴ないます。
それが周囲に理解されない決断であれば尚更です。
しかし決断や行動を支えるのもまた治癒力です。
鍼治療はそういった治癒力の発揮をサポートします。  


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