小児はり


当院の小児はりについて

“子供たちのことで、何かを直してやろうとするときにはいつでも、 それはむしろ我々のほうで改めるべきことではないかと、 まず注意深く考えてみるべきである”

カール・グスタフ・ユング

当ホームページをご利用していただくにあたり、まずはこちらのページの「ご利用前に」をご確認下さい。

小児鍼とは?



小児鍼は赤ちゃんや幼児に対して行う、皮膚への刺さない鍼のことです。
金属製の棒(てい鍼)やヘラ(イチョウ鍼)で行うところが多いです。
痛くない、何となく心地よい刺激です。
皮膚への鍼の歴史はとても古く、東洋医学の原典と言われる書物にも載っています。

当院では皮膚への刺さない鍼治療を専門に行っており、子供も大人も体表(皮膚)に鍼をしています。
基本に違いはありませんが、乳幼児はてい鍼(下の写真)で行うことが多く、大人は通常の鍼(ごう鍼)で皮膚のツボに接触させることが多いです。
ローラー鍼を使うことはなく、集毛鍼などでチクチクすることもありません。



赤ちゃんや幼児の場合、実際に施術している時間は大体5分以内です。
人によって(状態や状況によって)施術する時間や施術場所は異なります。

小児鍼の効果として、よく言われるのが赤ちゃんの「疳の虫(かんのむし)」です。
キーキーわめく、イライラや癇癪、夜泣きや夜驚症、そして夜尿症(おねしょ)などがあげられます。

見た目としては、青スジ、目がつり上がる、眉に力が入っている、髪が逆立つ、などです。


疳(かん)はやまいだれに甘と書き、甘いものの食べ過ぎ等による消化系統の乱れから生じるとも言われています。
また、精神的ショック(ストレス)があった場合も消化活動や疳に影響します。
小児鍼は消化や排泄、情緒を整え、治癒力を高めます。



皮膚と緊張



小児鍼(皮膚への鍼)は赤ちゃんの疳の虫だけではなく、乳幼児期を過ぎた子供に対しても効果があります。
慢性的な緊張や不安は治癒力を妨げるだけでなく、それ自体が心身の問題(症状)となってあらわれてきます。
そういった問題を少しずつ解いていくことは小児鍼(皮膚への鍼)が得意とする分野です。

児童心理学者のM.S.マーラーは子供が母親と一体化した状態から自立していくプロセスを「分離-個体化」と名づけています。
(「乳幼児の心理的誕生 母子共生と個体化」)

それは子供が3歳ぐらいまでに安定した自他境界を確立し、少しずつ母親と離れても安心感を保ちながら対象(世界)と接していく成長過程です。
そういったプロセスがうまくいかない場合、子供は分離の感覚から不安や緊張に覆われ、”個体化”が妨げられるとされます。

また、ジョン・ボウルビィやメアリー・エインスワースなどによって提唱された愛着理論では、生後6ヶ月頃より子供は特定の保護者との親密な関係性を段階的に構築し(愛着行動)、それが外の世界に向かって行く際に安心して戻れる「安全基地」になると言われています。
そのような関係性(枠組み)が構築できない場合は障害(愛着障害)が生じるとのことです。


子供の不安(分離の感覚)や緊張と関連し、それらを解除する鍵と考えられるのが体表であり、皮膚感覚です。
科学の分野では、近年神経系と同じ外胚葉由来の皮膚表皮で神経伝達物質や受容体が続々と発見されています。
そして有毛皮膚に終末がある神経(C繊維)でも近年新たな発見があり、「安心感を伴なう心地よい漠然とした触感をゆっくりと伝える専用のシステム」(※1)などと呼ばれています。
C触覚繊維によって脳に伝えられる“広汎で心地よい信号”が心身(の発達)にどのように影響するか等の研究も行われているようです。(※2)

皮膚への適切な刺激はオキシトシンの分泌を促進しますが、オキシトシンは自律神経系、神経伝達物質系(ドーパミン、セロトニンおよびGABA/グルタミン酸)、免疫系などと相互作用があると言われています。
脳の報酬系とも関連する枠組み”オキシトシンシステム”は3歳までに基本的な発達が完了し、深刻なストレスによってその発達が妨げられた場合、中毒や依存といった問題への影響が指摘されています。(※3)

また、母親が十分になめたり毛づくろいをして育てたラットとそうでないラットを比較した実験では、扁桃体のベンゾジアゼピン類レセプターの数に有意な差があったとのことです。(※4)
ベンゾジアゼピンには不安を緩解する作用や筋弛緩作用があり、抗不安薬や睡眠薬などにも使われています。
オキシトシンは自閉症スペクトラム障害との関連性も研究されているようです(※5)が、ベンゾジアゼピンなどと同じく外部から投与しても問題の根本的な改善は難しいと思われます。


観点によって説は色々ありますが、 子供が生まれ持った肯定感や安心感を内に保ったまま成長していくために、乳幼児期の直接的な温かい触れ合い、目(表情)と目のコミュニケーションなどは欠かせません。
その過程は鳥が卵から孵化するのに温めてもらう必要があるのと似ていると思います。

保護者(必ずしも親ではない)との心地よい触れ合い自体が子供の健全な成長・発達に必要な栄養素です。
それによって体表(皮膚感覚)を意識する能力が養われ自他境界の基本となり、身体イメージや精神的な自己イメージへとつながっていきます。
乳幼児期を過ぎると少しずつ間接的な接触に移行していきますが、疲れ過ぎた時や傷ついた時、子供はやはり保護者との直接的な接触を求めます。
そのような経験を重ねていくことで、他者(対象)と適切な関係を構築する能力や緊張や不安を解く能力(システム)が培われていきます。

緊張を解く能力は生まれ持ったものに加え、環境によって培われるため、個人差がとても大きいです。
そして能力には限度や限界があります。
そういった能力を大きく超える状況に陥ると、子供は緊張を解除できなくなります。(それは大人でも同じです)

緊張は全体(全身)的なこともあれば、特定の部分(機能)や特定のパターン(場面)で生じることもあります。
習慣化した緊張は治癒力を妨げますし、次第に緊張自体が心身の問題(症状)として現れてきます。
特に何かショックがあった時や環境が大きく変わった時(転校、親の離婚、死別など)に、緊張や不安が症状となって表面化してくることは多いです。

疳の虫に特徴的な表情である、眉間にシワが寄る、目がつり上がる、常に表情が固いといった問題は、身体が成長して小学生になる頃には爪かみ、歯ぎしりや食いしばりなどとなり、顔面筋(表情筋)や咀嚼筋等の緊張が強まってきます。
それはチック、食いしばり、吃音、噛み合わせや虫歯、姿勢などにも影響します。

消化や排泄も緊張(ストレス)に影響されやすく、夜尿症、腹痛や便秘・下痢といった問題が出てきたりします。
痛みに過敏になったり心因性発熱などとして現れてくることもあります。
天候(気圧)の変化によって自律神経が乱れて一時的に症状が悪化することも多いです。

中学生ぐらいになるとイライラや抑うつが強まったり、身体面では頭痛や頭重感、肩こり、顎関節症、過敏性腸症候群、胃炎・十二指腸炎や吐き気(周期性嘔吐症)、過呼吸(過喚起症候群)、手足の冷えやのぼせ、食欲の異常(摂食障害)、生理の異常、自律神経の問題などが出てきたりします。
(こういった問題の原因が全て緊張やストレスというわけではありません。症状が長期間続く場合はまず病院での検査をお勧めしています。)
また、自己イメージが安定せず肯定感が低いと自分自身や他者を大切にすることができなくなりますし、集中して勉強やスポーツなどに取り組むことも困難となります。


小児鍼を含む皮膚への鍼がどのように効くのか、明確な作用機序は(自分には)分かりません。
鍼の作用機序論は小児鍼に限らず、その時代の科学的知見や発見によって変化していきます。
無数の要素が絡み合い相互作用している中で、一つの論に固執して他の可能性を除外することもできません。

しかし経験上、体表に適切な鍼刺激(小児はり)をしていくことで過度な緊張が解けていきます。
そして情緒、消化吸収、筋緊張、呼吸、睡眠など全体の調子が少しずつ変化していきます。
たとえ完治が難しい問題でも、全体の調子が整っていくことで日々の生活が楽になっていきます。

子供でも大人でも、ここでやっていることは基本的には同じです。
ストレスを抱えていたり身体が不調の時は、皮膚(境界)も場所によって弱っていたり昂ぶっていたりします。
そういった皮膚を鍼でそっと整えていきます。
その要点がツボであり、経絡をはじめ身体と精神のつながりを重視する東洋医学はとても役に立ちます。

鍼の効果は学習されて(トレーニングとなって)、皮膚-境界感覚が養われます。
そして緊張を解く能力や肯定感などが高まってきます。
一般的に子供は大人よりも変化が早いです。

それは何か強い刺激や薬で問題を一時的に抑える(感じなくさせる)やり方とは逆のアプローチです。
解消できなくなっている緊張を少しずつ解いていくことで、治癒や回復、学習や発達のサポートとなります。

治癒力を発揮するためのシステムを子供のうちに整えることはとても大切だと考えています。
子供が成長していく土台であり、子供が自分の道を進んでいく支えとなります。



皮膚と鍼については重複する部分もありますが、こちら「皮膚と鍼について:皮膚」もご参照下さい。


※1「触れることの科学」 P102より デイヴィッド・J・リンデン著 岩坂彰(訳)
※2「The functional organization of cutaneous low-threshold mechanosensory neurons.」
  「Discriminative and affective touch: sensing and feeling.」
  「Quantifying the sensory and emotional perception of touch: differences between glabrous and hairy skin」など
※3「Individual differences underlying susceptibility to addiction: Role for the endogenous oxytocin system」
※4「Maternal care during infancy regulates the development of neural systems mediating the expression of fearfulness in the rat」  
※5「自閉症とオキシトシンの研究:東京大学/金沢大学」 「オキシトシンと発達障害」



受け方


皮膚への刺さない鍼(体表の鍼、小児鍼)は刺す鍼とは異なる技術です。
自分も様々な鍼治療を受けてきて、学び、施術する側となりましたが、自分の経験からすると別物です。
そして小児はり、刺さない鍼と言っても、治療院(施術者)によって千差万別です。

そのため子供に小児鍼を受けさせる前に、まずご自身で皮膚への刺さない鍼治療を受けてみるとよいと思います。
皮膚への鍼が子供にしか効かないということはなく、もちろん大人にも効きます。
(上記したように、とても古くから行われていたことが記されており現代に至るまで続いています)

基本的に大人の方が子供よりも複雑な(拗れている)ことが多いため技術を要します。
そのためそこの治療院(施術者)の刺さない鍼がご自身(大人)に効けば、子供にも効く可能性は高いと言えます。
特に親や近親者であれば、子供と体質等が似ていることが多いですからなおさらです。

まずご自身で刺さない鍼を受けてみて、効果を実感して信頼できると感じたら子供に勧めてみて下さい。
子供のためにお風呂の熱さを確かめたり味見をしたりするように、こういったことは自分の身体(皮膚)感覚に基づいて判断する方が適切です。
あまり頭でっかちになっていると、派手な宣伝や肩書きなどに引っ張られて実際の身体感覚とはズレていくことがあります。

特にローラー鍼でなく普通の鍼(ごう鍼)や「てい鍼」で微細な刺さない鍼をされると、上手下手、合う合わないは容易に(直感的に)分かると思います。
皮膚感覚はとても賢いです。
(ただし強い刺激を受けると、そういった微妙な感覚は一時的に鈍くなります)
皮膚への刺激が不快でないのはもちろん大切ですが、刺激自体の気持ちよさよりも、その後心身がどのように変化していくかも重要です。

それで子供にも勧めたいと感じたら、たとえまだ子供が話せなくても、
「お母さんは受けてみてよかったんだけど、○○ちゃんも小児はり受けに行く?」
などと問いかけをして子供の意思を確認して下さい。
しっかりコミュニケーションを取った方が、子供もより安心して鍼を受けることができます。

逆に、ご自身が本心では受けたくないと思っているものを子供に強いたり、半信半疑のまま勧めたりしないで下さい。
また、「まず子供に受けさせてよさそうだったら自分も受けよう」など、子供を毒見役に使うような真似もしないで下さい。
そのようなことをすると、子供は混乱して逆に治癒力を妨げることになります。


子供との接触(触れ合い)を心地よいものにするためにも、ご自身の緊張や疲れを解消していくことはとても大切です。
気持ちにゆとりが生まれて自分自身や子供に対して気づくことが多くなりますし、対応の幅が広がります。

親が慢性的に緊張していたり疲れていたりすると、子供の微妙な感情を意識しにくくなり、共感することや理解が減ったり弱まったりします。
子供が触れてほしい時や触れてほしい場所への温かみのある接触でなく、冷たい(否定的・高圧的な)接触となりがちです。

そして子供は親を模倣(真似)していますが、親が緊張していればそれを含めて真似します。
「この子はいつも眉を寄せているんです」と心配そうに言うお母さんの眉が寄っていて、子供はそれを真似していることもあります。
自分では気づいていない自分の中の一面を子供の中に見てしまうのはよくあることです。

「まずは子供の問題を改善したい」という考え自体は悪いものではありません。
しかし、緊張やストレス、疲れ、不安などといった問題に関しては、自分(親)から解消していく方がスムーズなことが多いです。
(特に母親の場合、出産時の緊張が部分的に解消されないまま残っている場合もあります。)
親のコンディションがよくなること、そして親子関係がよりよくなることは、子供の緊張やストレスから派生する問題の改善を強く後押しします。


小児はりを受ける頻度は、状態や状況により様々です。
当然のことながら問題が深刻であれば、長期的・継続的な取り組みが必要になります。
質問された場合、当院では基本的に以下のようにお答えしています。

最初は少し間隔をつめて、変化や効果を確認するとよいと思います。
それで効果を実感できたら、方向性が合っている、改善の可能性があるということです。
(もし効果を実感できなければ小児鍼の適応ではないか、その先生とは合わなかったということだと思います)

その後は定期的に続けて、よくなって安定してきたら徐々に間隔をあけていくのがよいと感じています。
あせらず、気長に根気よく続けていくことが大切と考えています。

(※当院では保護者との信頼関係に基づいて子供の問題に取り組むために、ここで鍼を受けたことがある方のお子さんやお孫さんに小児はりをしています)


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観察


小児はりで激しい反応が出ることは滅多にありません。
緊張が解除されることで自律神経の切り替わりなどの変化が生じますが、たいてい大人よりスムーズです。

しかし小児はりの後は、特にはじめのうちは、子供の経過をよく観察して下さい。
心身の反応(変動)は生じますし、それは子供にとって普段とは異なる体験です。

治癒プロセスにおける心身の変動は様々です。
たとえば、風邪の時にウイルスと戦うための発熱や咳や鼻水、傷んだものを食べた時の下痢などはその代表です。
当然のことながら、そういった時は特に保護者の注意が必要となります。

必要な時に保護者の注意(ケア)が足りないと、子供は治癒プロセスを安心して体験・学習することができません。
不安感から親に注意を向けてもらうため問題を起こしたりしますし、それでも注意が向けられない場合は見捨てられ感が生じてきます。

また、子供は自分が体調が悪い時に(それが理由であってもなくても)親がイライラしていたり、過剰に心配される(薬漬けにされる等)と、治癒反応を抑え込むようになります。
それらは注意深く見守ること(観察)とは逆の無視(ネグレクト)や過干渉です。

治癒反応が何か自分にとって悪いこととして子供の記憶にインプットされてしまいます。
治癒プロセスに身を委ねる事や自然な回復を待つことができなくなり、小さな問題も拗れて治りにくくなっていきます。

そういったパターンが解消されなければ大人になっても治癒反応を抑え込むパターンを繰り返してしまいます。
それは治癒反応(を抑えこむことで生じる身体の不調)だけでなく、感情の抑圧や依存・中毒とも関連します。

子供が治癒プロセスを安心して体験・学習していくために、小児はりの後などは普段よりも注意深く見守って下さい。
そのためにも、ご自分が刺さない鍼を受けて経過を予め体験していることが大切になります。
治癒に伴なう心身のさまざまな変動は保護者に見守られているという安心感によって緩和されます。

プロセスを学んでいくことで子供は次第に保護者の注意を必要としなくなっていきます。
そしてその後の人生において自信の種(たね)となります。



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実践


自分で子供に小児鍼をできるようになると、いろいろ役に立ちます。
子供がちょっと体調を崩した時や精神的なショックがあった時、慢性的な問題の場合の長期的な取り組みなどにお勧めです。

もしご自身で子供に小児鍼をしたい場合は、

1.自身で皮膚への鍼を受けて、経過を観察する
2.子供が小児鍼を受けるのを見て、やり方とその後の経過を観察する
3.大体のやり方と、どのような経過を辿るかを知る
4.自分自身に対して行い、効果を実感するまで練習する
5.身近な大人(パートナーなど)に対して行い、感想を聞きながら効果を実感するまで練習する

それらのステップを経てから子供に行えば、たいてい問題なくできると思います。
現在当院では小児鍼のやり方を教えることは特にしていません。

小児鍼はとても簡単に見えます。(大工さんのカンナ掛けなどを見るのと似ていると思います)
そのため、「こんなことならすぐに自分でもできる」と考えてしまう人が多いのは当然と言えます。
そして本やマニュアルも数多く出ており、「こういう場合は○○経や○○のツボ」などと書かれていることもあります。
道具も(代用品も含め)すぐ入手可能でしょう。

また、子供のことを心配していたり、自身の疲れが酷い場合、つい焦ってしまうのも理解できます。
しかし、自分がされてみるとよく分かりますが、皮膚への鍼(接触鍼)は下手にやられると大変不快です。
そして不快な刺激や刺激過多の場合、問題が悪化していくこともあります。

より正確に言えば、不快な小児鍼や刺激過多の場合でも症状が一時的におさまる(変化が起こる)ことはあります。
でもそれは問題を無理に抑えこんだだけで、子供の自然な反応を怒鳴りつけたり暴力で抑圧するのと同じです。
問題が収まったように見えても、潜在化するだけでやがて酷くなって戻ってくるか他の問題として現れてくるなど長期的には子供の緊張を更に強めます。
(問題の悪化と治癒反応による一時的な変動は異なります)

不快な刺激でも乳幼児からはハッキリ文句を言われないので(実際は伝えてきているのですが)、スキルアップが難しいです。
いきなり子供を実験台にしてはいけません。


何事もセンスの問題はあり、一度見たり受けただけで大体やれる人は確かにいます。
そういう人は程よくリラックスしていて感覚や観察力が優れています。

緊張が強い方は多くの場合、静かに触れて感じ取ること(感じ取ろうとすること)、そして心地よく触れることが苦手です。
当然のことながらより多くの練習が必要になるのですが、緊張が強い方はそういった練習よりも「こういう場合はどこに鍼をするか」という外からの知識を求めがちです。

しかし、感じ取る練習や触れる練習を疎かにしたまま個別性を無視して大雑把な外的知識に基づいて鍼をしても、大して効果もなくすぐ辞めてしまうことになります。
以前は頼まれるとやり方を教えていたのですが、何度かそのようなことに遭遇して止めました。

皮膚への鍼治療を学びはじめの内は、国家資格を取得した者同士の練習でさえ刺激過多や不快な刺激による悪化がしばしば起こります。
(適切な指導者の下での練習であれば、酷いことにはならず戻せます。)

皮膚への鍼に真剣に取り組めばそういった失敗は(学び始めの頃は特に)起こりうるものです。
そして一度でもそのような経験をすれば「小児はりは誰でも簡単にできます」とは言えなくなります。

しかし、「小児はりをするための基本的な能力はほとんどの人に備わっています」と言うことはできます。
最初はとても緊張が強かった人が、自分で鍼を受けて興味を持って練習を続けていくことで、自身の緊張も解けてとてもうまくなることもあります。

これらのことから当院では初めから親が子供に行うのではなく、順次ステップアップしていくことを提案しています。


小児鍼をすること、練習していくことで、子供の境界をより尊重できるようになります。
もし、ご自身と親との境界が定かでない場合や親から境界を侵害されてきた場合、自分と子供との境界は大きなテーマとなります。

そういった問題はなかなか認識されません。
幼少の頃から親に言われ、されてきたことは、それがたとえ理不尽なことであっても強力な刷り込みとなっている場合が多く、問題を客観視することは難しいです。

そして問題を自覚していない場合の方が、子供に自分がされたことと同じようなことを繰り返しやすいです。(負の連鎖)。
ご自身が体表の鍼治療を受けていくと、そういった境界の問題はより明確になり、問題改善へとつながります。
(こちら「境界」も参照ください)

また、たとえ問題意識があったとしても、子供にどのように接するか具体的な“仕方”が分からないこともあります。
自分自身が保護者に心地よく触れられた体験が乏しい場合、子供に心地よく触れるのを難しく感じることが多いです。
(より問題が深いと、「難しい」と感じることや、できていないことに気づくことさえありません。)

その場合、自身が鍼を受けること、小児鍼を練習していくことで、直接的に”境界の尊重”を学び、表現することができます。
子供の境界を尊重することはその存在を尊重することにつながりますし、それは自分自身への様々な気づきとなります。

子供を理解するためには、まず自分自身を理解していくことが大切です。
世代を超えた負の接触(接触不良)の連鎖を断ち切ることは容易ではありませんが、可能です。

自分がされてきたこととは異なることを学んでいくのですから、集中力と時間を要する大きな課題(取り組み)となります。
しかしそれは実りのある学びとなることでしょう。
(こちら皮膚と鍼について「境界」もご参照ください)

当然ながら、子供が嫌がる時は無理に行わないで下さい。
そういう時やそういう時期はあります。

また、自分が子供に優しく触れることに何か葛藤を感じる時は無理に小児はりをしないで下さい。
そういう時はありますし、それを認めずに無理に行う方が問題がこじれていきます。

大切なのは丁寧な観察と、時間をかけてゆっくりと進めていくことです。
あまり「治してやろう」などと気負わず、心地よい小児鍼の継続が問題の改善へつながっていきます。

鍼治療を通じて、親子とも元気で境界を尊重し合える関係づくりに貢献できれば幸いです。


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